こんにちは、study bud です。
ネットワーク構築に関わる中でよく登場する技術に以下2つがあります。
- 「スタック(Stack)」
- 「リンクアグリゲーション(LAG)」
どちらも「複数をまとめて使う」という点では似ていますが、
実際には 目的も仕組みもまったく違う ものです。
今回は、それぞれの違いを IT 初心者の方でもイメージしやすいように、「工場と道路」のたとえ話 を使って、ゆっくり丁寧に解説していきます。
スタックとは?
スタック とは、複数のスイッチをあたかも 1台のスイッチ のように動作させる技術です。
スタックの最大のメリットは 機器の冗長化。一部の機器が故障しても、ネットワーク全体が止まらないように設計できます。
スタック構成には「Active機」と「Standby機」がいる

スタック構成では、複数のスイッチを1台のようにまとめて動作させますが、その中で「どのスイッチが指令役になるか」が決まっています。
このとき、スタック内では以下のような役割分担がされています:
- Active機(アクティブ機):ネットワーク全体の管理や制御を実行するスイッチ。スタックの中心。
- Standby機(スタンバイ機):Active機に何かトラブルがあった時に、すぐ代わりとして働ける予備機。
つまり、普段はActive機がネットワークを動かしていますが、もし故障などで停止した場合には、Standby機が自動的にメインとして稼働する仕組みです。
これにより、通信断が起こる時間を最小限に抑え、ネットワークの可用性(止まりにくさ)を高めることができます。
また、どのスイッチを最初からActive候補にするかは、「primary」設定で明示的に指定することも可能です。
switch 1 priority 15
このように、スタック構成は単なる「まとめ」ではなく、冗長化と役割分担によって高い安定性を実現しているのです。
工場のバックアップ体制のようなもの
工場のバックアップ体制のようなものです。
たとえ話で言うと、
スタックは「同じ製品を作る複数の工場を連携させて、どれか1つが故障しても他の工場で生産を続けられるようにする仕組み」です。
中央の指令室(マスター)が全体の生産管理をしていて、どの工場も指示通りに動いています。
実務では、スタックは コアスイッチやディストリビューション層 で使われることが多く、ネットワークの安定性や可用性を高めるために重宝されています。
リンクアグリゲーションとは?
リンクアグリゲーション(LAG)は、複数のポート(ネットワークの出入り口)を束ねて、1つの太い通信路のように扱う技術です。
この技術を活用することで、以下のようなメリットがあります:
- 通信速度の向上(帯域の拡張)
- 通信経路の冗長化(ポート障害時の継続)
通常、スイッチとサーバー、あるいは別のスイッチ間を1本のケーブルで接続していると、その1本に障害が発生した場合、通信が止まってしまうというリスクがあります。
また、ネットワークのトラフィックが増えた場合、1本の回線では処理しきれず、通信が遅くなる(いわゆるボトルネックになる)可能性もあります。
リンクアグリゲーションでは、たとえば4本の物理ケーブルを1つの論理リンクとしてまとめることで、以下のような効果が得られます:
- 通信を分散して流すことができ、スムーズなデータ転送が可能
- 1本の回線に障害が起きても、残りの回線で通信を維持できる
つまり、リンクアグリゲーションは「速くて強い通信経路」を作るための実用的な技術なのです。
よくあるリンクアグリゲーションの構成例
リンクアグリゲーションは、実務でもよく使われており、私が今のところ経験している感じでは以下のケースで導入されています。
- コアスイッチとフロアスイッチの間
複数のフロアに配置されたフロアスイッチと1台または2台のコアスイッチに接続する際にも使われます。通信経路の冗長化+負荷分散が主な目的です。
- LACPを使った自動リンク検出
リンクアグリゲーションの構成には、手動設定の他に LACP(Link Aggregation Control Protocol) を使った構成もあります。
LACPを利用すれば、ポートの追加や障害検知を自動で行うことができ、運用負荷を軽減することが可能です。今のところ実務ではLACPがほぼ使われているイメージがあり、手動での設定はあまり見かけないように見受けられます。
リンクアグリゲーションはネットワークの基盤を支える堅実で重要な技術として、さまざまな場面で活躍しています。
複数の道路を使って渋滞を回避する方法
たとえ話で言うと、
LAGは「通勤路を1本から3本に増やして、混雑を避ける&もし1本が工事中でも他の道で通勤できるようにする仕組み」です。
荷物(データ)を運ぶトラック(パケット)がスムーズに通れるように、複数のルートを確保しておくイメージです。
実務では、サーバーとスイッチ間の通信や、L3スイッチ間やL3スイッチ-L2スイッチ間の高速接続など、トラフィックが多くなる区間でよく使用されます。
スタックとLAGの違いまとめ
項目 | スタック | リンクアグリゲーション |
---|---|---|
たとえ話 | 複数の工場の冗長体制 | 複数の道路で渋滞・断絶を回避 |
対象 | スイッチ単位 | ポート単位 |
主な目的 | 機器の冗長化・可用性向上 | 帯域増強・通信の冗長化 |
実務用途 | コアスイッチ構成・一元管理 | サーバーやL3 or L2間の通信強化 |
実務では「両方使う」パターンが多い
スタックとLAGは「どちらを使うか?」ではなく、どちらも併用するのが一般的です。
- コアスイッチをスタック構成で高可用性に
- そこにリンクアグリゲーションで高速かつ冗長な接続を作る
このように組み合わせることで、ネットワーク全体の強さ・柔軟さ・スピードを最大化することができます。
「スタックとリンクアグリゲーションって似てるけど何が違うの?」と疑問に思う方も多いと思います。
でも、それぞれの役割をたとえ話にしてみると、
- スタック:ネットワークの建物自体を丈夫にする
- LAG:データが通る道を太く、かつ安全にする
と、目的の違いが見えてくるのではないでしょうか。
少しでも理解の助けになれば嬉しいです!
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