はじめに
Spanning Tree Protocol(STP)は冗長構成のループ防止に欠かせないプロトコルです。
STPの状態を確認する際に最も使用されるのが show spanning-tree コマンドになります。
本記事ではコマンドの打ち方から出力の読み方まで、表示例を交えて丁寧に解説します。
利用可能なスイッチのモード
show spanning-treeコマンドを使用できるモードは下記の通りです。
モード | プロンプト例 |
---|---|
特権EXEC | Switch# |
※グローバルコンフィグレーションでもコマンドの先頭に「do」 + 半角スペースをつけることで
コマンドを実行することは可能です。
必要に応じて terminal length 0 でページ送りを無効にすると一覧性が向上します。
構成図

コマンド解説:show spanning-tree
show spaninng-treeのコマンド構文は下記の通りです。
show spanning-tree [vlan-id]
vlan-idの指定はオプションになります。指定せずにコマンドを実行した場合は、全VLANの集約ビューになります。
上記コマンドは、ルートブリッジと非ルートブリッジによって出力結果が異なります。
出力結果の表示例は下記の通りになります。
※下はルートブリッジの場合の表示結果になります。
Switch#show spanning-tree VLAN0001 Spanning tree enabled protocol ieee Root ID Priority 4097 Address 0002.4A54.654A This bridge is the root Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec Bridge ID Priority 4097 (priority 4096 sys-id-ext 1) Address 0002.4A54.654A Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec Aging Time 20 Interface Role Sts Cost Prio.Nbr Type ---------------- ---- --- --------- -------- -------------------------------- Fa0/4 Desg FWD 19 128.4 P2p Fa0/1 Desg FWD 19 128.1 P2p Fa0/24 Desg FWD 19 128.24 P2p
早速、コマンドの見方の解説に移りますが、個人的に大きく3つの項目で分けた方が理解しやすいかなと考えております。分け方を色分けして表示しました。

確認の分類は以下の通りになります。
色の項目 | 説明 |
---|---|
緑色 | 使用されているSTPのモード |
青色 | ブリッジの情報 |
赤色 | 操作しているブリッジのポート情報 |
使用されているSTPのモードですが、PVST+とRSTPの場合ですと表示形式が異なります。
PVST+の場合は下記の通り表示されます。
Spanning tree enabled protocol ieee
RSTPの場合は以下の通り表示されます。
Spanning tree enabled protocol rstp
モードの確認方法は簡単ですね。ちなみにSTPのモードを変更したい場合はグローバルコンフィグレーションにて以下コマンドを設定させてやる必要があります。
Switch(config)#spanning-tree mode [pvst][rapid-pvst]
スパニングツリーで構築されている全スイッチに設定を行う必要がありますので、ご注意をお願いします。
次にブリッジに関する情報の説明を行っていきます。
先ほど3分割したところから、さらに2分割します。わかりにくくてすみません。
ポイントとして、ルートブリッジ、非ルートブリッジ関係せず、PVST+,RSTPが動いているブリッジ全台数に、ルートブリッジの表示は現れます。
この点は重要ですので、押さえましょう。

コマンドの見方としては、以下の表をご確認ください。
項番 | 説明 |
---|---|
1 | ルートブリッジの情報 |
2 | それ以外のブリッジの情報 |
では早速コマンドの解説を行っていきます。
Root ID Priorityは、STPのPriority値を確認できます。
本記事のルートブリッジはpriority値を4096に設定しておりますので、確認コマンドでは以下の通り表示されています。
Root ID Priority 4097
ポイントになりますが、PVST+、RSTPではSTP PriorityにVLANのIDが加算された数値をPriority値として扱います。
本記事で説明しているルートブリッジのPriority値は「4096」、VLAN IDは「1」ですので合計値の4097がPriority値となります。
ちなみに、非ルートブリッジでは、show spanning-treeコマンドを実行すると以下の通りに表示されます。
Bridge ID Priority 32769 (priority 32768 sys-id-ext 1)
Address 0060.474E.ADD6
Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec
Aging Time 20
STPのPriority値はデフォルトで32768になります。
次に2行目のはブリッジのMacアドレスになります。
Address 00E0.F986.0DC6
Ciscoの場合は、MACアドレスの表記が少し独特で4桁ずつ + .(ドット)で表されます。
3行目の表示は、ルートブリッジの場合のみに表示されます。
そのため、ルートブリッジの場合、Root IDとBridge IDはPriority値とmacアドレスの値は同じになります。
This bridge is the root
下の行にはSTPで使用される各種タイマーの値が表示されます。
Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec
各種タイマーの説明は以下をご確認ください。
タイマー値 | 説明 |
---|---|
Hello Time | BPDUを送信する間隔値(1秒~10秒で設定可能) |
Max Age | ルートブリッジからのBPDUを受信しなくなってから、障害発生とみなす時間 |
Forward Delay | リスニング、ラーニングの状態にとどまる時間 |
Aging Time(エージングタイム) | MACアドレステーブルの保持期間 時間内に更新がない、MACアドレスの値はテーブルから削除される |
最後に一番下のInterfaceに関する情報ですが、一言で言えば操作しているブリッジのインターフェス情報を示している情報になります。以下の表示例は、SW-03にてshow spanning-treeコマンドを実行した結果になります。
Interface Role Sts Cost Prio.Nbr Type
---------------- ---- --- --------- -------- --------------------------------
Fa0/2 Root FWD 19 128.2 P2p
Fa0/3 Altn BLK 19 128.3 P2p
Fa0/24 Desg FWD 19 128.24 P2p
ここで押さえておきたい点は以下の3点です。
- ポートのロール(役割)
- ステータス
- Type
PVST,RSTPではポートの役割が3つに分かれます。
表示名 | 表示名 | 読み方 | 説明 |
---|---|---|---|
Root | Root | ルートポート | ルートブリッジの一番近いポート BPDUを受信するポート |
Desg | Designated | 指定ポート | BPDUの転送を行うポート |
Alth | Alternate | 非指定ポート | ブロッキングポート。STP内でループを防ぐためのポート |
今回はあくまでもshow spanning-treeコマンドに焦点を当てているため、詳しい説明は省きますが、簡単に言えば、rootポートがBPDUを受信するポート、DesginatedポートがBPDUを送信するポート、Alternateポートがデータの送受信を行わないポートとざっくり理解してもらえれば最初は問題ないかと思います。
ステータスですが、PVSTの場合、以下の4つのステータスがあります。
表示名 | 読み方 |
---|---|
BLK | ブロッキング |
LIS | リスニング |
LRN | ラーニング |
FWD | フォワーディング |
最後にtypeですが、接続先、ポートの設定によって表示が異なります。
表示名 | 読み方 |
---|---|
P2p | スイッチ間の接続状態を示す |
Shr | 接続先にハブが間に接続されていることを示す |
最後に
スパニングツリー・プロトコル(STP)は、レイヤー2ネットワークを語るうえで避けて通れない基礎テクノロジーです。最近は、スタック構成やリンクアグリゲーション(LAG)を採用したスイッチがぐっと増え、「もう STP を深く学ばなくてもいいのでは?」と思われがち。しかし、冗長構成でループを確実に防ぎ、トラブルシュートをスムーズに行うためには、やはり STP の仕組みをしっかり理解しておくことが欠かせません。
当ブログでは、LAG やスタック構成のメリット・デメリットも別記事で詳しく解説しています。STP と「何がどう違うのか?」をセットで読み比べていただくことで、レイヤー2 冗長化技術の全体像がよりクリアになるはずです。ネットワーク設計や運用の幅を広げたい方は、ぜひ併せてチェックしてみてください。
リンクアグリゲーションに関する解説記事はこちら
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